中学教科書改訂のポイント

2021年度から使用される中学校の新しい教科書

 2020年度から、小学校で新しい指導要領にもとづく教科書の使用が開始されました。中学校は2021年度から新しい教科書に変わります。新学習指導要領では、中学生が身に付けるべき資質・能力として、「知識および技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という3つの柱が設定されており、各教科における学習の成果を、「何を知っているか」だけにとどまらず「何ができるようになるか」にまで発展させることを目指しています。
 では、各教科の変更点や注意点などを具体的に見ていきましょう。

英語

①単語数は現行教科書のおよそ2倍に増加
 新学習指導要領では、中学で1600~1800語の単語を扱うこととしています。教科書では各社とも、小学校で習った語を含めて2500語以上の語彙が掲載されています。

②高校履修内容が中学へ移行。より豊かな表現が可能に
 新学習指導要領では、これまで高校履修内容とされてきた文法事項の一部が中学に下りてきます。従来の中学英語では表せなかった状況を、英語でより正確に表現できるようになります。

③高校内容の移行と小学英語による影響
 新しい中学英語教科書は、小学校で英語を学んだことを前提に編集されており、文法の履修順にも大きな変化が見られます。
 たとえば、従来は中1の後半で習っていた助動詞canが、新教科書では中1の最初の単元でbe動詞・一般動詞とともに扱われるケースが多くなっています。
 また、これまで現在完了の3用法は継続→経験→完了の順に扱うのが一般的でした。新教科書では現在完了進行形が加わったため、ほとんどの教科書が継続用法を3用法の最後に扱い、これと関連させて現在完了進行形を扱っています。

国語

①「情報の扱い方」の題材が増加
 国語の新学習指導要領では、新しく「情報の扱い方」が設けられました。これに伴い、新教科書でも、各社が対応する題材を盛り込んでいます。
 また、従来は挿絵程度の扱いだった文章内の図版やグラフについて、より着目させる、批判させるといったものもあります。

②定番題材は多くが継続
 新教科書でも、「少年の日の思い出」「走れメロス」「故郷」といった定番題材は継続掲載されています。

数学

①学習内容の変更
 「統計」の内容に大きな変更があります。たとえば、代表値の求め方は中1から小6に移動し、新たに中1で「累積度数」、中2で「四分位範囲、箱ひげ図」を学ぶことになりました。また、「素因数分解」が中3から中1に移動しました。単に移動しただけでなく、約数・倍数と関連させる内容になっており、やや難しくなった印象があります。

②活用問題の増加
 ほとんどの教科書で、学習した内容を活かして日常生活などに考えを広げる活用問題が扱われています。理由や方法を説明させたり、長めの文章や資料から情報を読み取る問題などを通して、思考力・判断力・表現力を高めることを狙いにしていると考えられます。また、時差や地図などを題材にするなど、他科目との関連性も見受けられます。

理科

①学習内容の変更
 中1物理で扱っていた「圧力」「水圧」が、それぞれ中1地学、中3物理に移動しましたが、内容はこれまでと変わっていません。中3化学では「イオン化傾向」を詳しく扱うことに加え、従来の「ボルタ電池」の他に高校化学では定番の「ダニエル電池」が追加となりました。難易度が高い上、扱う実験例も教科書によってばらつきがあるため、注意が必要です。

②用語の変更
 中1では、「哺乳類」「は虫類」「脊椎」が漢字表記になります。中2では「元素」という用語が追加され、「化合」がなくなります。「脊髄」は漢字表記になります。中3では「同位体」が追加され、「イオン式」が削除、「優性・劣性」は「顕性・潜性」に変更されます。

社会

①地理:ボリュームが減少
 日本の地域構成の単元が移動して、中1の早い段階で時差や国の領域を扱うことになりました。地理の配当時間が5時間分減ったことにより、全体的にボリュームは減少、特に世界の人口や地形などの箇所が減っています。

②歴史:横のつながりを意識した世界史内容の充実
 高校社会との接続を強化するため、世界史のボリュームがどの教科書でも増えています。ユーラシアの東西世界のつながりを意識させるなど、歴史の横のつながりを意識させるような構成が多く見られます。

③公民:時代を反映した新しい用語や学習項目の登場
 急速な情報化の進展を反映して、「人工知能」「ビッグデータ」「仮想通貨」「SNS」「クラウドファンディング」などの情報に関する新しい用語が数多く掲載されています。学習項目としては、「持続可能な社会」に関連した記述が増加しました。